今後の営業について、約1時間遅くし、また早くなります

ファーラウトは従来6-9時で営業してきましたが、しばらくは夜の演奏と営業は7時から始めてやっていきます。原則として10時ですが、終わりは出演者によって9時半から10時までのどこかと変わる状態です。

11月から、土日祝の昼営業はほぼ1時間遅めて1部/13-15:45、2部/16-18:45という時間設定でやります。3部夜の演奏時間帯は7-10pmとなります。演奏の終了は10時ですが、グループによっては15分か30分程度早く終えます。

短期間に何度も時間設定が変わり、皆さんに迷惑をおかけしますが、お客さん並びに出演者の方々、皆さん、よろしくお願いします。

ファーラウト–村尾陸男

作曲家別ポピュラー&ジャズ・ソング辞典

皆さんへ

今月はファーラウトのお客さんで伊原直之さんという方が出された本をご紹介します。伊原さんは横浜地下鉄の弘明寺駅のそばで長いこと古レコード屋をやってらして、1990年ごろになんの面識もないのに僕もフラッと立ち寄ったことがありました。確か合計で3、4回そこは覗きに行きましたね。しかし彼はもう10年くらい前にその店を閉めてしまい、その無類に詳しいジャズ・レコードの知識をまとめて本にしようと奮闘していました。彼は移転する前のファーラウトに来て、僕はその出版について相談を受けましたね。僕の本の出版社にも話しましたが、本の出版は最近急激に困難になってきていまして、うまくいきませんでした。それで彼は結局なんと自費出版の挙に出ました。執念ですね。

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これがその第一巻の僕が携帯で撮った写真で、あまりいい写真でなくてごめんなさい。「作曲家別ポピュラー&ジャズ・ソング辞典」というタイトルで、(1755-1970)と副題があり、A4の大きさの表紙には10〜11人くらいの歌手や作詞曲家の写真が載せてあります。200頁くらいで厚くないですが、字が小さいので内容はかなりの分量です。普通の本にするとこの半分くらいの大きさになりますから、400、500頁になるでしょう。とくに1930〜1965年くらいの曲、歌手、レコードに関する総辞典という感じでしょうか。そして作曲家の名前でAから始まってZまでなんと合計8冊、索引が別巻で2冊の計10冊になり、今本巻5、索引1まで出たところで、10月中に巻6が出ると彼は言っていました。11月に7巻、12月に8巻、12月かもしかしたら来年1月にずれ込むかもしれないが索引2と出て、この大作が完結するとのことでした。

それでもう買われた方もいますけど、1冊2800円で安くはないですが、と言ってその内容と大きさや量から言って高いとも言えません。10/7の夜に僕は彼に直接電話して、この著作の労をねぎらい、あれこれ話しました。遅くても来年1月には全10冊完結するようですから、ぜひとも揃えたいですが全巻揃えると3万円近くになります。それで僕から提案したんですが、今年中の期限をつけて予約を募り、全巻購入する人には大マケの2万円で送料込みという破格の値段で提供してはどうかと誘いました。これに対して彼はなんと即OKの返事をくれました。どうぞ皆さん、電話、メイル、来店のときでも、年末までの期限ですが、予約を申し込んでください。支払いは来年1月15日まででいいです。遠くから購入される方には振り込みもできるようにし、本は1月末日までに必ず発送します。そして最後に、一番重要なことなんですが、当店ファーラウトはそこから仲介料など一銭もいただきません。

斉藤和英について/2019年7月の顧客メイルから

 ファーラウトが前の場所から今のところへ引っ越したとき、僕は自分の家も一緒に引っ越し、減量のため大量の本とレコードを処分しました。本はブックオフに電話してダンボール箱に30箱、1400冊ぐらいだったと思いますが、持っていってもらいました。あとで査定の結果を訊いたら、2500円くらい、ほんの20冊ぐらいだけ買い取り対象になるが、あとは引き取りはするが買取対象にはならないとのことでした。僕は1冊100円でも14万くらはいくかな、なんて勝手な計算をしていましたからこれにはびっくりしましたね。それで全部店の方に返品してもらい、奥の窓際に並べて1冊50〜300円くらいで売り始めたのは2014年でしたか。それでも少しずつ売れて20箱くらいまできて、1冊100円前後でももう10万くらいにはなったんではないでしょうか。

 それで少し本の間がすいてきたので、先週3箱ほど新たにおろし、150冊ほど新(古)本を出しました。洋書はそうそう売れませんし、辞典もまったく売れませんが、そのなかに1冊、昭和5年ごろに出た斉藤秀三郎(ひでさぶろう)の和英辞典がありました。大きな千頁を超える本で歴史的な名著です。斉藤秀三郎は昭和4(1929)年にこの本を書いた直後に亡くなってしまいまして、このあと英和辞典を出す予定で書き続けていたんですが、残念なことに原稿はHまでで途絶え、それはなりませんでした。彼は桐朋学園大学で小澤征爾の先生だった斉藤秀雄のお父さんです。もう90年も前に書かれた和英辞典ですが、日本の英語教育の歴史に燦然と輝き、今でもその価値を揺るがすような辞典は出てきていません。本当に不思議です。よく大正時代あたりにこれだけ勉強できたと思えるほど、彼の辞典はすぐれていて他の追随を許しません。

  斉藤秀三郎
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 シェイクスピア劇団(多分イギリスの)が東京公演をやったときに、彼は客席から発音が悪いとケチを付けて、係員に追い出されたという有名な話しが残っています。どこまでもすごい人だったようですね。彼の辞典は著作権が切れているのでネットの英和辞典でこれをアップしているサイトがあり、僕は利用させてもらっています。それはネットの良さで和英でも英和としても使える利点があり、最近僕は毎日すごい頻度で斉藤和英の英和利用で世話になっています。本当にありがたいです。まあそれもあって、彼の本を古本コーナーに出したようなもんですね。ところでもう今の日本人は斉藤秀三郎の名前すら知りません。こんな辞典を置いておいても誰も見向きもしませんでした。それが深井さんという永田にお住まいの爺さんがいまして、ファーラウトが開店した2003年頃にフラッと入ってきて、当時70代後半でしたか、それからちょくちょく覗きに来て僕とあれこれおしゃべりしました。

 それで今の場所に引っ越してからもときどきやってきて、彼はもう90を過ぎていましたね。医者に毎日2時間歩けと言われたからとそれを律儀に守り、永田から歩いてきたりしていました。それで彼が2016年くらいにやってきて古本を眺め回していて、この斉藤和英を見つけ、定価5000円(今は1万円)くらいのこの本を500円(このコーナーで最高値でしたが)で彼が買って帰りました。ちょっと重いけど、仕方ないわい、と言いながらかついで帰りました。深井さんはこのところ見えないので、実は心配しています。でもまだ存命中かどうか問い合わせるのも、気が引けてしていません。もちろんお年を召していたからですが、斉藤秀三郎の名を知っていた唯一の人でしたね。この棚に出した本は、ほとんど音楽、文学、芸術に関するものばかりですが、本に関心のある方は、どうぞまたファーラウトにいらして、奥の古本コーナーを覗いてみてください。手前味噌になりますけど、いい本ばかりで古本屋で買うよりはるかに安いです。これからも残った4、5百冊の本を随時出していきますから、楽しみにしていてください。

村尾陸男より

音楽書の出版について!

村尾陸男から出版についての近況報告です。

このあいだキャリフォルニアの音楽出版社のHPを覗いてましたら、1ペイジ全面に大きく楽譜類のコピーは違法だと訴えていました。以前僕が数冊そこの本を翻訳して出版しましたし、リアルブックなど大々的に出している大きな会社です。もう一つ東部の音楽書も出していた教育関係の老舗の会社に必要があって問い合わせたところ、もうなくなっていてなにか商業関係のまったく知らない会社に買収され、そこに連絡すると社員が本の内容が理解できていず、わけの分からない返事が返ってきてもうあきらめました。出版社はどこもかしこも全滅状態です。

うちに出演するミュージシャンと話していたら、彼はノウトPCにリアルブックなど百冊ぐらい入っていると自慢げに言い、ほとんどどんな曲でも瞬時に楽譜が取り出せると言ってました。一時期プロの演奏家用に1001とかその他正式な出版物でないものが出回っていたことがありましたけど、もう今はプロもアマもなくしかも写真ファイルかなにかでタダで一瞬に取りこめてしまいます。これでは出版社が潰れるのはやむを得ないですね。

それでキンドルとかいうファイルのみの本が出てきました。今年春ごろにデイヴィド・ラクスィンDavid Raksinという作編曲家の自伝のキンドル版を買って読んでいて、部厚いのでやっと先週読み終わりました。その自伝は出版物としてはもう品切れで、売れないので再版の可能性はなく、キンドルで読むしかないんですが、それでもありがたいことでした。それからファイルで売ることもなく、幻の名著と言われるものはたとえばグーグルブックスとか言われる頁にアップされていていつでも読めるなんていうサーヴィスもあります。これもありがたいです。もうほかに手に入れる方法がないとすれば、こういう方法で読めるのはありがたいですね。

僕自身も改訂版や新版を出すことがほぼできなくなり、ネット出版に頼るようになりました。このラクスィンの自伝やグーグルブックスで読むことのできた昔の音楽書などから「アメリカ文化とポピュラー音楽」という僕の新著が生れました。本で出版すれば2000円を下ることはないでしょうが、725円という安さです。ほかにも新著やジャズ詩大全の改訂版を次々と出してきています。まあ宣伝はさておき、ここで僕の言いたいことは、ネット化で被る大きな弊害とその便利さについてです。弊害も大きいです。人の悪口など嘘も交えて大々的にアップできます。その分人間がどんどんイカれてきています。

こんなこと言い始めたらきりがなく、この話しは終わりませんね。最後に一つだけお知らせしましょう。Jazz-Lyrics.comでコウル・ポーターの [You’d Be So Nice to Come Home To] の解釈を大幅に更新しました。「帰ってくれたら嬉しいわ」という誤訳から始まって、この曲の解釈はグチャグチャになってきました。ネットにはこの曲の訳と称するものが氾濫しています。しかしどれも似たりよったりの愚劣なものばかりで、玉石混交ではなく泥石混交です。以下にその紹介文を入れました。

[You’d be so nice to come home to]の改訂版上梓。ぜひ皆さん読んで下さい。